紅芳記

「まずは、源次郎。
何があったか説明致せ。」

皆で座って、殿が訳をお尋ねになります。

「いや、それは…」

源次郎殿は、甚だ困った、と言いたげに頭をかき、なかなか話してはくれません。

殿も痺れを切らし、利世殿に同じようにお聞きになります。

利世殿は一度深く息を吐いて、話し出しました。

それは、私も頭を抱えるような話でございました。

と、いうのも。

「御殿…源次郎様は、私がいつまでたっても子が出来ぬのがお嫌になっておいででございましょう。
わざわざ屋敷に側室を呼び寄せて、あちらにばかり通われるのですから。
故に、私は越前に帰ろうかと思うたのです。
さすれば、その側室めが正室になれるではありませぬか。
いつまでたっても子が出来ぬ私より、その側室のほうが可愛ゆうございましょうや。」

などという事を申されるのですから。

これには殿も、ついため息をついてしまわれました。


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