紅芳記

その翌日、殿が馬でお戻りになりました。

よほど慌てて来たのでしょう、額に汗を掻きながら私の部屋にお出ましになりました。

「すまぬ!
もうそろそろ生まれる頃だと城に向かっていたのだが間に合わなかった!
無事に産まれてくれて何よりじゃ、よくやったぞ小松!!」

そう言いながら殿に抱きしめられます。

本当に心配しながら来てくれたのでしょう、殿は汗でびっしょりと濡れておりました。

「殿…。」

「おおっと、すまぬ、汗臭くは無かったか?」

「いいえ。
私は幸せ者でございます。」

「可愛い事を。」

「殿、来てくださって本当に嬉しゅうございます。
されど、お務めの方は大丈夫なのでございますか?」

「ああ、片付けられるものは片付けて来た。
心配せずとも良い。」

そのお言葉通り、殿はそのまま沼田城に留まり、家臣を名代として上方とも逐一連絡をされるようになりました。

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