i want,
……………
銭湯から学校までの坂道を下る。夜風が火照った肌に気持ちいい。
夜の道は好きだ。歩き慣れた道なのに、どこか違う場所へと向かっている様な錯覚に囚われるから。
ぽつりぽつりと見える灯りが、瞼に優しく染み込んでいく。
「あーおーっ!」
夜の空気を気持ちよく感じていた所に、さとの無遠慮な叫び声が届いた。思わず足を止め、声のした方へ目を凝らす。
学校の横にあるグラウンドに、微かに動く人影が見えた。やがて闇に慣れた目は、その輪郭をはっきりと浮かび上がらせる。
グラウンドの真ん中にいたのは、さと達男子だった。
「さとー?」
「ほうじゃ!花火するけぇはよ来いやー!」
よく見ると、さとは何かを夜空に振り回していた。多分あれが花火なんだろう。
「今行く」と、そう言いかけて、一瞬止まった。