i want,
「…煙草の味」
「ん?」
「煙草の味がした」
「ほうけ」、くくっと笑いヒカルが言った。
心臓は、まだうるさい。
ヒカルはいつからか、煙草を吸う様になった。
いつからだろう、思い出したかったけど、その記憶はない。
胸の奥が、ちりっと痛む。
「…ヒカル」
「ん?」
「あたしも煙草吸いたい」
カチャリとスプーンとテーブルの触れる音が響いた。ヒカルがあたしを見ているのが感覚でわかる。
あたしはただ俯いて、テーブルの上に並べられているカレーを見つめる。
「…ダメじゃ」
ため息混じりにヒカルが言った。
「…何でよ」
「何でもじゃ。お前には煙草は似合わん」
「…けちっ!」
あたしはだだっ子の様にヒカルにあたり、テーブルの上に置きっぱなしになっていた煙草を掴んだ。
そのまま玄関へと走り出す。
「あっ!おい、あおっ!」
ヒカルの声が背中を追いかけたが、それが半分諦めの声だったので、あたしは構わずにヒカルの家を出た。
玄関を閉め、背中を預ける。
ヒカル自身が追いかけてくることはなかった。