i want,
…ヒカルは少しずつ、変わっている。
それがいいことなのか悪いことなのかなんて、まだまだ子どものあたしにはわからないけど、それでも一抹の寂しさは抱えている。
あたしだって変わってるのに。どうしてヒカルにだけ、不変を求めれるのだろう。
「…我が儘じゃん」
そう呟き、玄関にあるポストに手をかけた。
少しずらせば、日に焼けていない壁が見える。
近くにあった石で、あたしはガリッと傷をつけた。
子どもじみた落書き。
相合い傘に、ヒカルの名前。
あたしの名前を書きかけて、やめた。
ポストを元に戻し、石を手のひらで転がす。
家の奥から純君の笑い声が聞こえて、それがあたしの背中を押した。
歩きながら、空を見上げる。赤と青の入り交じった、中途半端な夕焼け。
あたしは思い切り、落書きに使った石を投げた。
それはゆるやかな弧を描き、道路の奥の草むらへと消えていく。
左手に残った煙草の箱を、軽く握った。
…ただあたしは、ヒカルと同じ世界にいたかったんだ。
それがこの空の様に、歪んだコントラストであったとしても。