i want,

「おい矢槙、ジャージじゃなくて制服を着ろ!」

そんなことをぼんやり考えていると、廊下の端で生徒指導につかまった。軽く舌打ち。

「だって先生、さっき体育じゃったんよ」
「うそつけ、お前らのクラスは今日体育ないじゃろうが。スカートも短い!ジャージの裾からちょっとしかみえてないが!」
「せんせーセクハラー」
「何言うんけ!しかもお前その髪…おいっ、矢槙!!」

長くなりそうだと判断したあたしは、「はいはーい」と返事をし、渡り廊下を駆け抜けた。先生に構ってる暇はない。
あたしの逃げ足が早いことを知っている先生は、追いかけることはしなかった。

冬の寒さがジャージをすり抜けて肌を刺激する。
ジャージの袖を伸ばし、手のひらを隠した。
伸びた茶色い髪が冷たくなった気がする。

背中を授業開始のチャイムが押した。下駄箱で下履きに履き替えるあたしの向かう先は、授業じゃない。

ルーズソックスを少し伸ばして、冷たい空気の満ちる屋外へと駆け出した。












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