i want,
……………
学校を抜け出し向かう先は、ひとつしかなかった。
部室でジャージからセーラー服に着替えた。校則違反だったけど、寒さに負けてカーディガンを羽織る。ずり落ちるルーズソックスを上げて、玄関の前に立ち止まった。
ヒカルの家に来るのは、案外久しぶりだと思った。冬休みの終わりだろうか。遊んだ帰り、寒さに負けてヒカルの家でココアを飲んだ以来だ。
無駄に心臓がうるさかった。
緊張というより、不安だろうか。久しぶりに会う、不安。
あたしは軽く深呼吸をして、玄関に手をかけた。引き戸になっているそれは、あたしのかけた力にガチャと嫌な音をたてる。
鍵がかかっていた。
こんな田舎村で、鍵をかける家は珍しい。留守にしていない限り、鍵なんてかける必要がないのだ。
…いないのかな。
そう思いながら、ガラス戸をノックしてみようと手を掲げた瞬間。
「いないよ、ヒカルなら」
後ろから聞こえた声がそれを止めた。あたしは思わず振り返る。
ヒカルの家の前にある小さな階段。その下に立つ顔は、ヒカル以上に久しぶりなもの。
カバンを肩にかけたままあたしを見上げる視線は、変わっていなかった。