i want,
「それだけかよ」
「だって、」
思わず視線を上げて、ヒカルのそれとぶつかった。
その視線があたしに与える衝動は、何一つ変わっていない。
捕らえられる、久しぶりのこの感覚。
苦しい。
「だって?」
「…何でもない」
染まる頬を隠す様に、あたしは俯いた。あたしの横顔を見ながら、ヒカルが笑っているような気がした。
「…大丈夫なん?」
俯いたまま訊く。「何が」とヒカルの返事が頭上で響く。
あたしは自分の爪先を見ながら、小さく訊いた。
「家のこと」
あたしの問いに、ヒカルはすぐには答えない。その沈黙が怖くて、あたしはひたすら自分の爪先を瞳に映させる。
「…大丈夫も何も、あおが心配するようなことは何もないけぇ」
ヒカルが立ち上がった音がした。風が左半身をくすぐる。
ゆっくりと顔をあげると、空を臨んでいるヒカルが見えた。