i want,
「大丈夫じゃ。何も変わらんわ」
ヒカルは笑っていた。
その目にはただ、長く続く飛行機雲だけが映っている。
まるで、自分に言い聞かせている様な声だと思った。
あたしもそっと立ち上がる。
ヒカルの伸びた背には追い付けずに、あたしはまたヒカルを見上げる形になった。
何も言わずに、ヒカルの制服の裾を握る。
それを合図に、ヒカルの視線があたしに移る。
唇を合わせたのは、ほんの一瞬だった。
その熱は、計り知れない程だったけれど。
会いたかったと、言いたかった。
言えなかったのは、それより強い気持ちが蘇ったから。
キスをしてもまだ遠いこの感覚は、会いたいなんて、そんな単純な気持ちじゃ埋まらない。
隣にいるはずのヒカルが、一番近いはずのヒカルが、あたしには遠くて仕方なかった。