i want,


……………

「ねぇ、綾達ってキスする?」

ゴホッとむせたのはオレンジジュースを飲んでいたさと。
「汚いなぁ」と綾がしかめっ面をした。

「うん、するよ」
「おい綾実っ!」

あっさりとあたしの質問に答えた綾に、さとが思い切り突っ込みを入れる。

「なによ、ほんまのことじゃ」
「じゃけどそんなあっさり言うねぇや!あおもあおで何訊くんけ」

半ば呆れ気味にそう言うさとに、あたしは口元を尖らせて「いいじゃん別に」と呟いた。


二年生になって教室が一階から二階へと変わったことから、あたし達はたまり場を三階へ続く階段の踊り場へ変えた。

まだ暑くはないものの、外の木々が青く染まり始める5月の終わり。あたしと綾とさとは、お揃いのオレンジジュースで昼休みを過ごしていた。

もう中身がないのか、ずずっと音をたてながら綾が訊く。

「何、あお達せんの?」
「や、せんわけじゃないけど…」

改めて訊かれて、なかなか凄い質問をしてしまったと自分で気付く。ストローをくわえたまま、あたしは膝を抱えた。

「…綾達はさぁ、何でキスするん?」
「何でって?」
「理由っていうか…どういう時とか、そういうこと」

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