i want,
「ヒカル…」
呼ぶと同時に、ヒカルの顔が笑った気がした。
随分久しぶりに、その笑顔を見た。
何が何だかわかっていないのは、あたしだけじゃなかっただろう。
自習と言っても授業中の教室に突然現れたヒカルを、呆気にとられた表情で見つめるクラスメイト。
彼らの間を我が物顔で歩き、ヒカルはあたしの前へ来た。ヒカルの香りが鼻腔をくすぐった。
「来て」
「え?」
「えぇもん見せちゃるけぇ」
ニッと笑い、目を見開いたままのあたしの腕を握った。引き上げられたあたしは、わけがわからないまま立ち上がる。
「え、ヒカ…」
「ええけぇ、ほら」
どこかご機嫌な声で、ヒカルは流れる様にあたしの手を取り歩き出した。もたつきながら、あたしはヒカルに続いて教室を出ていく。クラス中の視線を痛い程浴びていることに気付いたのは、いつだっただろう。
ただあたしの目の前のヒカルの背中が、幻影じゃないことを祈った。