i want,
……………
授業中の廊下は、しんとしていて心地いい。沢山の人が詰まっているのに、あたしだけの世界にいる気がする。小さな優越感が押し寄せる。
一定のペースで歩くヒカルの背を、あたしも一定のペースで追いかけていた。髪の毛の生え際が黒くなっている。伸びたんだ、と思う。
小学生の頃は、嫌でも毎日顔を合わせていた。隣の席が続いたあの頃が懐かしい。
今思えば、あの頃のあたしは随分贅沢な位置にいた。いつも近くにはヒカルがいた。
関係は近くなったはずなのに。
あの頃より確実に、ヒカルが遠いのは何でだろう。
「あお?」
呼ばれて、はっとした。無意識に歩きながら、三階まで来ていた。
「何ぼーっとしちょるんけ」
「べ、別に!」
無駄に声を張り上げるあたしに、ヒカルは可笑しそうな笑顔を向けた。心拍数が、上がる。
赤くなりそうな自分を誤魔化すために、あたしは急いで言った。
「ていうか、何?どこ行くの?」
「こっちじゃ、こっち」
三階の渡り廊下を渡り、向かった先は新校舎。三階にだけ、新校舎に繋がる渡り廊下があるのだ。