i want,
新校舎には特別教室や美術室があるものの、三階は殆んど使われていない。使われているのは一階の保健室くらいだろう。

さっきいた校舎より、より静けさに包まれる。

ヒカルが向かった先は、新校舎の廊下の突き当たりだった。

「ここ?」

使われていない特別教室の並ぶ廊下の端。まだ新しい香りがするそこは、床から天井にまで続く大きな窓がある。

ヒカルはその前に立ち、「見てみ」と上を指差した。
小首を傾げながら、あたしはヒカルの指差す方を見上げる。

「…わぁ」

天井まで続く窓から見えるのは、雨上がりの澄んだ空。
そこに架かっていたのは、切れ目のない綺麗なアーチだった。

「虹だ」
「そうじゃ。サボり場所探しよったら見つけたんじゃ」

廊下にぺたんと腰かけて、自慢気にヒカルは言った。

「凄いよう見えるじゃろ」
「うん…凄い!屋上から見よるみたい!」
「屋上に上がれたらもっとええんじゃけどな」

うちの学校は屋上には上がれないので、三階が一番空に近い場所だった。天井まで窓のこの場所が、校内にいて一番この虹がよく見える場所だろう。

「渡り廊下からは見えんかったね」
「向きが違ったからの。穴場じゃろ」
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