i want,
ひひっと悪戯な笑顔を見せるヒカルの隣にあたしも笑顔で腰かけた。
久しぶりに会う緊張は、気付いたらどこかに消えていた。

「久しぶりに学校来たと思ったら、授業出んとこんなとこうろつきよったんや」
「出ても寝ちょるだけじゃけぇ。校内探検でもしよる方が、よっぽど時間を有効に使えるわ」
「それを屁理屈って言うんよ」

にんまり笑ってそう言うあたしの頬を、「この口が言うか!」とヒカルが両手でつねる。
「痛い痛い!」と笑いながら言うが、ほんとはちっとも痛くなんかない。

こんな些細なじゃれあいが、幸せで仕方なかった。

不意にヒカルの指の力が弱まった。
解放されたあたしの頬を、今度はヒカルの手のひらが包む。

近いと感じる暇もなくヒカルの唇があたしのそれに、触れた。

笑い声が途切れる。

しんと静まった校内。

唇が離れた頃、ようやくあたしの心臓が速まり出した。

ヒカルのキスは、いつも唐突なのだ。

だからあたしは、ドキドキする暇もない。

唇を離したあたし達は、黙ったままお互いを見つめていた。
ヒカルの目は、真っ直ぐだった。
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