i want,


あたしは男子に名字で呼ばれるより名前で呼ばれる方が多い。前にも言ったが、幼なじみに男の子が多いのも影響してると思うけど。

だから、誰があたしを名前で呼ぼうが、本人も相手もさして気にしてないのだ。

周りを除いたら。

「まぁねー、あおはもう『あお』って感じじゃもんね」
「名字で呼びよるのって田口とかぐらいじゃろ?」
「まぁ田口に名前とかで呼ばれたくないっちゃね~」

あたしの話題から田口に矛先が移りかけたので、心の中で安堵のため息をついた。


「…いいなぁ」


…多分、真依達には聞こえてなかったと思う。

この、みどの小さな呟き。


あたしは敢えて、聞こえないふりをしてしまった。
そのまま田口の悪口に花を咲かせる。

みども何事もなかったかの様に話題に溶け込んでいた。

笑っていても、耳の奥に残る声。


『…いいなぁ』



…あたしにどうしろっち言うんじゃろう。

みどの気持ちもわからないこともなかったけど、正直あたしにはよくわからなかった。



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