i want,


「ね、したらちょうど男女同じ人数じゃない?二人一組で入ろうやぁ!」

あたし神ちゃんっ、と、さとの腕を組む真依。真依はさとを気に入っていた。なんていうか、犬みたいで。
腕を組んだ二人は、まるで美人の姉とその姉になつく弟みたいだ。

その時のあたしの脳内は、驚くくらい迅速に動いていたと思う。普段頭を使わないから、知恵熱でも出るんじゃないかってくらい。

斜め上に豆電球がついた瞬間、あたしは凄い速さで提案していた。

「じゃ、じゃあさ、歩夢は卓也でいいじゃ!みどは垣枝、歩夢は卓也!」

不本意極まりない。
でもこれが、ベストカップルなはずで。

「じゃあうちらから行くね!出口集合、逃げ出すの禁止!ほら、田口行こっ」

かなりいぶかしげな表情をしている田口の腕を掴み、あたしは段ボールでベタベタに固められた教室のドアを開けた。
受付をやってた子は同じ学校の友達だったから、すんなり暗闇に通してくれる。

明るい昼間から真っ暗な教室に押し込められた瞬間、あたしはとりあえず安堵の溜め息をついた。



< 29 / 437 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop