i want,


「綾、お誕生日おめでとうって、まだ言えてないのに…」


力の入らないまま泣き続ける綾を抱き締めて、あたしはようやく実感した。


何度呼んでも、もう起きない。

「あお」ってあたしを呼ぶことも、久しぶりって笑うことも、もうできない。

もう二度と、さとの声は聞けない。


二十歳のさとには、二度と、会えない。




…二十歳の誕生日を目前にして、さとの時計は止まった。


あたしも綾も、二十歳になったのに。


変わらない足取りで進むと信じてたのに。




止まった針は、二度と動くことはない。






綾を抱き締めたまま、あたしは初めて泣いた。












本当の別れを、初めて知った。













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