i want,
「これ、もうすぐ風化するんじゃって」
あたし達の後ろから、福山が言った。
「嘘じゃろ」
「ほんまじゃって。さっき聞いたもん。もうすぐっちゅーのは言い過ぎやけど…でもいつかは、消えてなくなるんじゃて」
「そりゃーいつかはなくなるじゃろ」、さとがそう返したが、鉄筋のそれがいつか消えてなくなるなんて、正直あたし達には想像できない。
「せっかく生き残ったのにな」
卓也の声が、静かに響く。
ここに原爆が落ちたとは思えない程に、穏やかな空間。
「人間が造り出したものなんじゃ。その人間がいつかは死ぬんじゃから、そりゃ消えるじゃろ」
いつからいたのか、あたし達より少し離れた場所から、垣枝が言った。
静かな視線でドームを見つめる。
その横顔に、表情はなかった。
「不変なんかないじゃろ。いつかは変わるし、いつかは消えるんじゃ。そういうもんじゃ」