i want,
敷きたての白い布団に、無防備に体を埋める。
旅館独特の匂いが、お風呂上がりの火照った体を優しく包む。
それがあまりにも優しくて、不意に目頭が熱くなった。
『楽しいでしょう』
…楽しくなんか、ない。
こんな遠くの街で、遠くの夜で、あたしは何で一人でいるんだろう。
どこからか響く笑い声が、どうしてこんなに遠いのだろう。
強くなんかなかった。
そんなのただの、思い上がりだった。
あたし、今凄く泣きたい。
一人でいたくない。
「なんじゃ、寝ちょるんけ」
突然孤独から解放されて、あたしは驚いて起き上がった。
振り向かなくても、その声の主はわかる。
いつの間に開けたのか、襖の向こうに立っているその人は、ポリポリとだるそうに濡れた頭を掻いた。
…垣枝。