i want,


「…なんけ、」


…無意識にあたしは、垣枝のパーカーの裾を握っていた。

垣枝が振り向く。
あたしと目が合う。

それは限りなく、あたしが欲しているものに近くて。


「…嫌だよ」


泣かないようにするのだけが、精一杯だった。


「垣枝は…離れてかんで。怒ったり呆れたりしてもええけぇ、おらんくなったりしんで。…ずっと友達で、おって」


…多分あたしは、自分が思うよりもこたえてたんだ。


挨拶くらいしか交わさない関係。

お揃いのポーチ。

知らない話題。

あたしがいない場所での、笑い声。


本当は凄く、寂しかった。

どうしたらこんなことにならなかったんだろうって、きっと心の奥底で何度も考えた。


でも、それでもどうしても、失いたくない人。

多分今、一番失いたくない人。


「…お願い」



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