i want,



…「もぉ、どうしようかと思ったいね。田口に聞いたら垣枝も帰っちょらんっち言うけぇ、もしかしたらとは思ったけど」

先生が部屋に帰った後、あたしと真依はそっと部屋を抜け出して非常階段で話していた。

小さな声で喋ってはいるものの、それは錆びた階段に心地よく響く。

「ありがとね。めっちゃ助かったよ」
「ほとんどは田口が考えたんじゃけどね」

長い腕を前につきだして、真依は続けた。

「点呼前になっても戻って来んけぇどうしようって思いよったら、部屋に田口が来て。あたしを呼び出して、廊下で垣枝も帰ってないこと教えてくれたんよ」

田口が真依を呼び出したということは、多分あたし達の今の状況に気付いているということで。
誰よりも早くみどの気持ちに気付いた田口だから、そこは知っていても当然だろう。

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