ロ包 ロ孝
空は気持ち良く晴れ渡り、空気も澄んでいる。折から吹き付けていた強風もこの頃にはおさまって、僅かに波頭が白くなる程度に落ち着いていた。
ガラガラガラガラァァァ
その低く、腹の底を抉るように響いているディーゼルエンジンの音が不快で、俺は1人デッキに上がった。
「随分来てしまったな」
気付けば本土は彼方に霞んでいて、俺達の気持ちを知ってか知らずか、はぐれ鳥がのんびり空に浮かんでいる。
「今回はどうぞ宜しくお願いします」
「こちらこそ。お顔色がすぐれないみたいですけど、大丈夫ですか?」
出航後暫くして、同行させて貰う事となったマギー伸子に挨拶を済ませる。飛行機での直行便が無い為、彼の国から定期的に日本へやって来る貨客船で渡航する羽目になったが、俺を筆頭にして、エージェントの殆どが酷い船酔いに悩まされていた。
彼女は海鮮の総書記に気に入られているので、彼の国へはこの貨客船で度々渡航している。この程度の船旅は慣れっ子なのだそうだ。
「面目ない。船は滅多に乗らないので……いやなに、これ位平気です、何でもありませんよ。あっはっは」
そう笑い飛ばしてはみたものの、伸子の部屋を辞した後、より激しい頭痛と吐き気に襲われた俺は、船室のソファーに倒れ込んでいた。
「淳、大丈夫ぅ? かなり酔ってるわね。目の下に隈が出来てるわよ?
さては航海だけに、後悔してるんでしょ。ふふふ」
里美はけろっとして笑顔を崩さない。
「ああ、こんな事になるんだったら栗原と交代すれば良かったよ」
「今からでも間に合うわよ? 上陸してしまったらもう後戻りは効かないけど……」
「馬鹿言うな。ここ迄来ておめおめと帰れるか!」
「それもそうよね」
水平線を見つめながら微笑む里美の横顔は、何故か寂しげに見えた。
ガラガラガラガラァァァ
その低く、腹の底を抉るように響いているディーゼルエンジンの音が不快で、俺は1人デッキに上がった。
「随分来てしまったな」
気付けば本土は彼方に霞んでいて、俺達の気持ちを知ってか知らずか、はぐれ鳥がのんびり空に浮かんでいる。
「今回はどうぞ宜しくお願いします」
「こちらこそ。お顔色がすぐれないみたいですけど、大丈夫ですか?」
出航後暫くして、同行させて貰う事となったマギー伸子に挨拶を済ませる。飛行機での直行便が無い為、彼の国から定期的に日本へやって来る貨客船で渡航する羽目になったが、俺を筆頭にして、エージェントの殆どが酷い船酔いに悩まされていた。
彼女は海鮮の総書記に気に入られているので、彼の国へはこの貨客船で度々渡航している。この程度の船旅は慣れっ子なのだそうだ。
「面目ない。船は滅多に乗らないので……いやなに、これ位平気です、何でもありませんよ。あっはっは」
そう笑い飛ばしてはみたものの、伸子の部屋を辞した後、より激しい頭痛と吐き気に襲われた俺は、船室のソファーに倒れ込んでいた。
「淳、大丈夫ぅ? かなり酔ってるわね。目の下に隈が出来てるわよ?
さては航海だけに、後悔してるんでしょ。ふふふ」
里美はけろっとして笑顔を崩さない。
「ああ、こんな事になるんだったら栗原と交代すれば良かったよ」
「今からでも間に合うわよ? 上陸してしまったらもう後戻りは効かないけど……」
「馬鹿言うな。ここ迄来ておめおめと帰れるか!」
「それもそうよね」
水平線を見つめながら微笑む里美の横顔は、何故か寂しげに見えた。