ロ包 ロ孝
 今までオペレーションや術の事を一切口に出来ない状況に在った為、ストレスが溜まっていたのだろう。

「ははは、大丈夫ですよ。ここなら敵に聞かれる心配も有りません、存分に喋って下さい」

「そうだ。そうでしたね。
 でもそれなんですが坂本さん。【闘】(トウ)を使って会話すればいいのではありませんか?」

 俺も最初は伝達の【闘】で話せば、会話を傍受されないだろうと考えていた。しかしそれが音波である以上、術使用の際には周りの空間に何らかの変化が現れる筈だ。

その結果、音波の変位を解析されて音声化されでもしたら、すぐに何を話しているのかが知れてしまう。【闘】で運ばれる声に暗号化は施せないのだから。

「念には念を入れて、使わない方が賢明でしょう」

 任務を安全に遂行する為には、僅かな落ち度も有ってはならない。周到に事を運ぶのに、過ぎることはないのだ。

「関さん。では暗闇に紛れて、もう一度潜入を試みるという事ですね?」

「はい。しかし恐らく夜の方が警戒は厳重かと思われます。
 万が一の事も有りますので、坂本さん達も逃走準備をぬかりなく整えておいた方が……」

 難しい顔をして語尾を濁した関は一転、にこやかに笑って言う。

「いや、我々新派の辞書に『失敗』の文字は有りません。その頁は破いてしまいましたからね!
 坂本さん達は大船に乗ったつもりで待っていて下さい」

「はははっ、関さんらしくて何よりです。ではおとなしく吉報を待つ事にしますよ。
 ところで、いい加減出ないと怪しまれそうですね」

「では行きますか」

 遮音材の外側にはシャワーの音を流してある。ここには風呂掃除の体(テイ)で入っているので、俺達はそれらしい格好で部屋を出る必要があった。

タイミングを見てシャワーの音を消し、浴室を後にする。


< 347 / 403 >

この作品をシェア

pagetop