君を愛す ただ君を……
「越智君が真面目に受けないなんて有り得ない。大ちゃんが喧嘩を吹っ掛けたんじゃないの?」

あたしは大ちゃんの隣に座った

「随分と、越智愁一郎の肩を持つなあ。ほんとに真面目に受けてなかった。真剣に走ろうとしなかった。その場限りのしのぎ的な簡単な走りで、僕が納得すると思うか? 15本、走らせたが…それでも真面目に走らず、僕に面白くない冗談を言ったんだ。許せないから腕立て100回するように言った。その最中に、陽菜のことを聞いてくるから、頭にきてさらに100回追加した」

「なんてことを…」

後半なんか…教師というより大ちゃんの勝手な怒りじゃない

「僕だって、頭に血が上って悪かったなって思ってる。越智愁一郎が、次回から真面目に体育の授業を受けると一言口にしてくれれば、腕立ては免除しようと思ったが…彼は200回きちんとやってのけた」

大ちゃんが、ふうっと息を吐き出しながら、うつ伏せで気を失っている越智君を見つめた

「若いってすごいよ。気合いと根性で、ある程度はやって退けられるからね」

大ちゃんが、目を輝かせている

「ますます欲しくなった?」

「喉から手がでるくらい、欲しいよ。でもそれ以上に、陽菜が欲しい」

大ちゃんがあたしの手を握ってきた

あたいの肩がびくっと反射反応を起こす

「大ちゃん、それは……」

「答えはまだ聞かない」

大ちゃんがにこっと笑う

「でも、あたしは…他に好きな人が」

「知ってる。越智愁一郎でしょ?」

「え?」

あたしはぱっと顔をあげて、大ちゃんの目を見た

「陽菜のしぐさを見ていれば、わかるさ」

あたしは下を向いた

「ごめんね。それに…あたしと結婚しないほうがいいよ。この心臓、近々限界が来そうだよ」

大ちゃんの手がぎゅっと強く握りしめてきた

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