君を愛す ただ君を……
「しぃちゃんが羨ましいな。越智君に愛されてて」

あたしがにこっと笑うと、越智君が何とも言えない切ない顔をした

「涼宮は、告白しないのか?」

「え?」

「だって、学校で好きなヤツがいるって」

越智君が言い難そうに語尾を濁した

あたしたちは改札を抜けると、駅のロータリーに出た

「それじゃあ、あたしはこっちだから」

あたしは自宅のある方向を指でさした

「答え、聞いてないよ」

「え?」

「告白しないの?」

越智君がまっすぐな目で見つめてきた

あたしはゆっくりと首を縦に落とした

言えないよ

好きって……

言ったら、今の心地よい関係が崩れちゃうもの

崩したくない

壊したくないよ

「どうして?」

「どうして…かな」

あたしは「あはは」と苦笑した

「しぃの言うとおり、涼宮は可愛いと思う。だから…」

あたしは『それ以上言わないで』と言わんばかりの顔をして、首を横に振り続けた

「いいの。言いたくないの。言ったら…相手に迷惑がかかるから」

「それでも俺、涼宮には幸せになってもらいたい」

「十分、幸せだから」

「笑ってないだろ? 心から、涼宮が笑ってる姿を俺は見たことがない」

「え?」

あたしの心臓がどきっとした

心の奥まで、越智君に見られているようなそんな気がした

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