メモリー


しばらくの沈黙の後、ようやく前田が口を開いた。


「子供たちがあまりにも楽しそうだったから、一緒に…走っちゃいました。」


「まぁ、だめじゃない。笑ちゃんは、走っちゃいけない体なんだから。」


看護婦の話を聞いて、再び生まれる疑問。


…走っちゃいけない体…??


なんだそれ。

なんで、前田は走っちゃいけないんだよ


「…すいません。」

「もう、無理しないのよ。じゃあ、私、次の人の検温しなきゃいけないから、もう行くわね。お大事に。」


俺が状況を掴めないまま、

看護婦はその場から去ってしまった。



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