アリスズ
☆
景子は、姉妹の眠る部屋へアディマと一緒に戻ってきた。
しかし。
扉を開けると、そこには不思議な光景が待っていたのだ。
綺麗に着物を着つけた梅と、半裸の身体に毛布をマントのようにまきつけた菊が。
三つ指ついて、景子をお出迎えしたのだから。
「うわっ、梅さん菊さん、何してるんですか!」
梅は、まだ身体の具合が思わしくないようだし、菊はあんな格好だ。
顔なんか、昨日の血でまだ少し汚れている。
アディマも、二人の不思議な姿を、目を見開いて見つめていた。
「一言、御礼を」
菊が、重々しく口を開く。
「見ず知らずの私ども姉妹の面倒を見ていただき、本当にありがとうございました」
梅が、少し顔色のよくなった肌で、穏やかに微笑む。
「おかげでまた、今日も生きながらえることが出来ました」
二人。
深々と頭を下げる。
「ちょ、ちょっと待って! そ、そんなのいいから、そんなとこに座ってないで!」
あわあわと、景子は二人を立ち上がらせようとした。
正座をして、手までついて頭を下げる。
日本人としては、最高の御礼の形だろう。
しかし、大げさすぎる。
景子はただ、年下の女の子たちの面倒を見ることに、走り回っていただけなのだ。
いわば、勝手に姉のように、お節介を焼いていただけ。
こんなにも、感謝されるいわれはなかった。
親のしつけが、よほどしっかりしている家なのだろう。
二人とも、無茶苦茶マイペースではあるが。
「あなたたちがいて、私の方がもっと助かってるんだから、そんなことはやめてーー」
そう。
こんな世界に、景子一人放り込まれたのなら、ずっとずっとパニックに陥っていただろう。
昨夜だってうまく切り抜けることが出来ずに、今頃のたれ死んでいたかもしれないのだ。
言葉の通じる相手が、自分以外にあと二人いる。
こんなに、心強いことはなかった。
「だから、早く立ってー」
二人の腕を持って、何とか引っ張り上げようとしている景子は。
よほど、それが滑稽に映ったのか。
アディマに、声を出して笑われてしまった。
景子は、姉妹の眠る部屋へアディマと一緒に戻ってきた。
しかし。
扉を開けると、そこには不思議な光景が待っていたのだ。
綺麗に着物を着つけた梅と、半裸の身体に毛布をマントのようにまきつけた菊が。
三つ指ついて、景子をお出迎えしたのだから。
「うわっ、梅さん菊さん、何してるんですか!」
梅は、まだ身体の具合が思わしくないようだし、菊はあんな格好だ。
顔なんか、昨日の血でまだ少し汚れている。
アディマも、二人の不思議な姿を、目を見開いて見つめていた。
「一言、御礼を」
菊が、重々しく口を開く。
「見ず知らずの私ども姉妹の面倒を見ていただき、本当にありがとうございました」
梅が、少し顔色のよくなった肌で、穏やかに微笑む。
「おかげでまた、今日も生きながらえることが出来ました」
二人。
深々と頭を下げる。
「ちょ、ちょっと待って! そ、そんなのいいから、そんなとこに座ってないで!」
あわあわと、景子は二人を立ち上がらせようとした。
正座をして、手までついて頭を下げる。
日本人としては、最高の御礼の形だろう。
しかし、大げさすぎる。
景子はただ、年下の女の子たちの面倒を見ることに、走り回っていただけなのだ。
いわば、勝手に姉のように、お節介を焼いていただけ。
こんなにも、感謝されるいわれはなかった。
親のしつけが、よほどしっかりしている家なのだろう。
二人とも、無茶苦茶マイペースではあるが。
「あなたたちがいて、私の方がもっと助かってるんだから、そんなことはやめてーー」
そう。
こんな世界に、景子一人放り込まれたのなら、ずっとずっとパニックに陥っていただろう。
昨夜だってうまく切り抜けることが出来ずに、今頃のたれ死んでいたかもしれないのだ。
言葉の通じる相手が、自分以外にあと二人いる。
こんなに、心強いことはなかった。
「だから、早く立ってー」
二人の腕を持って、何とか引っ張り上げようとしている景子は。
よほど、それが滑稽に映ったのか。
アディマに、声を出して笑われてしまった。