アリスズ
△
ブロズロッズは、どうやら有名な土地のようだ。
町の人々に聞けば、すぐに方向を教えてもらえるほど。
菊の言葉は、余り進歩がなかったが、景子は日々向上していった。
前よりも、もっと懸命に覚えようとしているのだ。
そして、農村などに寄る度に、作物の様子を見て土を見て、村人と大地の話をするのである。
彼女の知識がとても役に立ったのか、家に泊めてくれたり、旅の食料を分けてもらえたりと良いことずくめだった。
とある村など、しばらく滞在してくれとまで言われたほどで。
迷いながらも、景子は断っているようだったが。
その間、盗賊に3回ほど出くわした。
いずれも少人数だったので、菊が丁重に追い払ったが、やはり女の二人旅は物騒ということが分かった。
前は、ダイという大きな番犬がいたために、少人数の盗賊などは手出ししてこなかったようだ。
菊の役に立つところなど、結局はそういう荒っぽいことだけ。
ある意味、景子に食わせてもらっている状態なのだ。
結局。
ブロズロッズという町が、次の町であることを知ったのは、彼らと別れて更に1ヶ月近くたった頃のことだった。
その頃には。
景子は、ほぼ日常会話には困らないほどになり、農作物の専門的な話でさえ、大体身に着けたようだ。
「いよいよ…次の町なんだ…」
不安そうに菊を見る、メガネの向こうの瞳。
まだ。
まだ、景子は御曹司に会いたがっている。
それは、菊にもよく分かった。
この国に根付いて生きてゆく術も、彼女は身につけつつあるというのに、それでもブロズロッズに向かわずにはいられないのだ。
あんな別れを、したからだろうか。
人づてにしか、伝えられなかった『さようなら』が、尾を引いているのか。
再会出来たところで、あのリサーが再び快く彼女らを受け入れるとは思えないのに。
それでもきっと。
もう一目。
もう一目だけでも、あの御曹司に会いたいのだろう。
菊も、ダイになら会ってもいい。
大きい図体の割りに、彼は気持ちのいい男だったから。
そんな菊の感情を、きっと猛烈に強くしたら──いまの景子になるのだろう。
ブロズロッズは、どうやら有名な土地のようだ。
町の人々に聞けば、すぐに方向を教えてもらえるほど。
菊の言葉は、余り進歩がなかったが、景子は日々向上していった。
前よりも、もっと懸命に覚えようとしているのだ。
そして、農村などに寄る度に、作物の様子を見て土を見て、村人と大地の話をするのである。
彼女の知識がとても役に立ったのか、家に泊めてくれたり、旅の食料を分けてもらえたりと良いことずくめだった。
とある村など、しばらく滞在してくれとまで言われたほどで。
迷いながらも、景子は断っているようだったが。
その間、盗賊に3回ほど出くわした。
いずれも少人数だったので、菊が丁重に追い払ったが、やはり女の二人旅は物騒ということが分かった。
前は、ダイという大きな番犬がいたために、少人数の盗賊などは手出ししてこなかったようだ。
菊の役に立つところなど、結局はそういう荒っぽいことだけ。
ある意味、景子に食わせてもらっている状態なのだ。
結局。
ブロズロッズという町が、次の町であることを知ったのは、彼らと別れて更に1ヶ月近くたった頃のことだった。
その頃には。
景子は、ほぼ日常会話には困らないほどになり、農作物の専門的な話でさえ、大体身に着けたようだ。
「いよいよ…次の町なんだ…」
不安そうに菊を見る、メガネの向こうの瞳。
まだ。
まだ、景子は御曹司に会いたがっている。
それは、菊にもよく分かった。
この国に根付いて生きてゆく術も、彼女は身につけつつあるというのに、それでもブロズロッズに向かわずにはいられないのだ。
あんな別れを、したからだろうか。
人づてにしか、伝えられなかった『さようなら』が、尾を引いているのか。
再会出来たところで、あのリサーが再び快く彼女らを受け入れるとは思えないのに。
それでもきっと。
もう一目。
もう一目だけでも、あの御曹司に会いたいのだろう。
菊も、ダイになら会ってもいい。
大きい図体の割りに、彼は気持ちのいい男だったから。
そんな菊の感情を、きっと猛烈に強くしたら──いまの景子になるのだろう。