アリスズ
○
「ウメ、ウメ!?」
イエンタラスー夫人の呼び声に、梅はクスッと微笑んだ。
今日は部屋にいるというのに、自ら探してくれるなんて、また何か素敵なことでもあったのだろうか、と。
ゆっくりと立ち上がって、部屋の扉を開けると、ちょうど夫人が小走りで駆けてくるところだった。
こういうところだけは、まるで少女のようである。
「どうかなさいました? イエンタラスー夫人」
梅を確認するなり、彼女はすぐさま手を引いて行こうとした。
「さあさあ、玄関へ…私の楽しみがやってきたのよ」
夫人を浮かれさせる何かが、そこにあるらしい。
それに、クスクスと微笑みながらついていく。
どんなお楽しみなのか、想像もつかないが、あえて聞くような無粋な真似はしない。
驚かせようとしている夫人の思い通り、存分に驚こうと思ったのだ。
そういう意味では、梅にも楽しみだった。
玄関につくと、そこに大きな箱が二つ置いてあるのが見える。
ただし、箱だけではない。
その側に、誰かが膝をついているのだ。
「イエンタラスー夫人には、ご機嫌うるわしゅう」
見上げてくるのは男。
しかし、頭に長い布を縛り付けている。
よく、大工の棟梁なんかがしている巻き方だ。
縛って後ろに垂れる布が、彼の髪のように見えた。
しっかりした目の人だわ。
それが、梅の第一印象。
やや太めの上がり気味の眉に、意思の強そうな目。
そこまで大きいわけではないが、たくましい体つき。
夫人に敬意は示しているものの、その姿は町民でも農民でもないように思えた。
沢山の匂いが、入り混じった男だ。
「挨拶はいいわ…早く見せてちょうだい、早く早く」
夫人は、男のことなど見ていない。
見ているのは、大きな二つの箱。
それが開かれるのを、いまかいまかと待ちわびているのだ。
ハイヨっと、男は大きな箱のふたを開けた。
そこには──見たこともないような品物が、ところ狭しと詰め込んであったのだ。
「ウメ、ウメ!?」
イエンタラスー夫人の呼び声に、梅はクスッと微笑んだ。
今日は部屋にいるというのに、自ら探してくれるなんて、また何か素敵なことでもあったのだろうか、と。
ゆっくりと立ち上がって、部屋の扉を開けると、ちょうど夫人が小走りで駆けてくるところだった。
こういうところだけは、まるで少女のようである。
「どうかなさいました? イエンタラスー夫人」
梅を確認するなり、彼女はすぐさま手を引いて行こうとした。
「さあさあ、玄関へ…私の楽しみがやってきたのよ」
夫人を浮かれさせる何かが、そこにあるらしい。
それに、クスクスと微笑みながらついていく。
どんなお楽しみなのか、想像もつかないが、あえて聞くような無粋な真似はしない。
驚かせようとしている夫人の思い通り、存分に驚こうと思ったのだ。
そういう意味では、梅にも楽しみだった。
玄関につくと、そこに大きな箱が二つ置いてあるのが見える。
ただし、箱だけではない。
その側に、誰かが膝をついているのだ。
「イエンタラスー夫人には、ご機嫌うるわしゅう」
見上げてくるのは男。
しかし、頭に長い布を縛り付けている。
よく、大工の棟梁なんかがしている巻き方だ。
縛って後ろに垂れる布が、彼の髪のように見えた。
しっかりした目の人だわ。
それが、梅の第一印象。
やや太めの上がり気味の眉に、意思の強そうな目。
そこまで大きいわけではないが、たくましい体つき。
夫人に敬意は示しているものの、その姿は町民でも農民でもないように思えた。
沢山の匂いが、入り混じった男だ。
「挨拶はいいわ…早く見せてちょうだい、早く早く」
夫人は、男のことなど見ていない。
見ているのは、大きな二つの箱。
それが開かれるのを、いまかいまかと待ちわびているのだ。
ハイヨっと、男は大きな箱のふたを開けた。
そこには──見たこともないような品物が、ところ狭しと詰め込んであったのだ。