もし明日が見えなくなっても切ないほどにキミを想う。



「ありがとう、教えてくれて」

「いいさ………これから、どこに行く気かい?」

「縄文杉でも見に行こうかな」


別に、目的はなかったから頭に浮かんだことを口にした。
おばさんは、そうかいと頷くと、あっちにいけば入り口があると教えてくれた。


「ありがとう」

「仕事だから礼なんか要らないよ………一つだけ忠告だ」


陽が沈む前には森には入らないこと。
暗闇では方向がわからなくなって迷子になる。


「………わかりました」

「自然を甘く見ないで用心しなさい」


それじゃね、とおばさんは、他の観光客の所へといった。その背中を見送ったあと、あたしはゆっくりと歩き出した。


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