見えないお姫さま



私はここへ来た目的を思い出す。

「少し話をしても平気かしら?」

「あ、はい」



「さっきは突然帰ってしまってごめんなさい」

「……いえ」

「私、貴方が私のこと見えないなんて知らなくて」

こんなの言い訳よね。

彼の好意を無下にしたのは確か。


「いいんです。慣れてますから」

「え?」

「俺はただの庭師です。そんな奴にわざわざ謝りに来て頂いてありがとうございます」


お礼を言われたのに何故だか悲しくなった。


「……………。」


何を言ったらいいの?

分からない。


これが『身分の違い』という私達の間にある壁なのかしら。



「ヴァン。また明日もここに来てもいいかしら?」

「はい。来たいだけ来て貰って構わないです」


それは私が姫だから言っているのかしら。

それとも本心から言ってくれている?


こんなこと考えていたら、きりがないわね。


「ありがとう。じゃあ、また明日」





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