ロシアンルーレット【コミカルアクション】





 あのまま署に戻れば良かった。


 スロットで大負けした俺は、いつものことながら数時間前の自分の選択を悔やみながら、店が立ち並ぶ通りをうつむきがちにトボトボ歩いていた。


 そんな俺の落胆に追い討ちをかけるかのように、何者かが俺にぶつかり、そいつの持っていた紙コップの中身が俺の皮ジャンの右胸辺りにぶっかかった。


 ホットコーヒー??


 もう数cmずれてたら、その熱い液体は上着の中のシャツにかかって、俺は火傷してただろう。


 ぶつかった相手は、肩から斜めに掛けていた大きな布鞄からハンドタオルを取り出し、濡れた部分を拭き始めた。


 身長185cmの俺には頭頂部しか見えないが、そいつの必死さが伝わって余計にイラッとした。


「おい、もういい。」


 すぐにでも立ち去りたくて、俺はそいつに向かって言った。


 そいつは無我夢中なのか、俺の呟きに気付かない。




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