治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん


「お姉ちゃん……何も言わない……。うん、何も言わないってことはそうだって言うのと同じだもんね。

でもママ、お姉ちゃんは優しい人だから、痛くないようにしてあげてね」


猫背気味の黒人が、ビクビクと反応した。


電池切れの機械のような動きでも――黒人は殺人兵器となってしまう。


後ろにあった石造りの十字架。大きさからすれば到底、人が持ち上げられる重さではないのに。


「押しつぶして、埋めましょう。お姉ちゃん、目を瞑ればあっという間だよ」


掲げられた十字架。
あの墓碑は黒人の殺人道具であり、それが今、私に向けられた。


黒人が一歩、こちらに近づく。


――そこで。
殺されるという恐怖を持ったそこで。



「やれやれだ。君だったか、悪さしているという奴は」


私の前に大きな背中があった。


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