治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん


もっとも讃えるべきは、その脚力ではなく。黒人がとどめを刺そうと大きく十字架を振り上げたあの時(隙)に、みぞうちに一撃を決めたその戦闘スタイル。


周りにいる死体どもも、力任せにねじ伏せていく。


チンピラの殴り合いのように、キレたまま振り下ろされる拳は、腐りかけの顔をへこませる。


時間などかからなかった。彼がこちらに来るまで。


「目を閉じて。動くな、ユリウス」


なに、と聞く暇もない。だから呆然と動かないでいれば――彼が、私の上に乗る死体を蹴り上げた。


目を閉じなかったことに後悔をする。


見てしまった。
蹴り上げられた部分から、真っ二つに分かれて死体を。


一気に軽くなった体だが、起き上がるには彼の手を借りなければ無理だったろう。


立ち上がるなり、シブリールさんは私についた土――死体から移った汚れを手で落とす。


その間に。


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