治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん


立ち上がったラグナロク様は、己が眼帯に軽く触れて笑った。


蔑むような笑い声。
人の心を見透かし、強者たる者が蚊でもあざ笑うような感じだった。


「………」


彼の口が閉じる。
もとから立ち上がっている彼にとって、ラグナロク様がそういった態度を取ったのに身構えたようだ。


「恥辱を晴らしたくはないかえ?“神々の黄昏”とまで言われ、“世界の終焉たる災厄”にまで一目置かれた鬼才よ。

逃げるとはなかなかにいい判断だと思うぞ。何せそなたは、“今こうして”、余の前に立っておる」


最後の文章をゆっくりと、まるでその言葉の真意を悟らせるようにラグナロク様は話していた。


頑なだった彼の指先が動く。


「欲しいだろうぞ、アフロディーテの魔導書が。三年では全ては解読出来ないだろうのぅ。

しかしてその三年で得た知識は、数多の魔導書を屑籠(くずかご)にいれてもいいほどになっただろうぞ」


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