治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
深くは覗かなかった、悪意はなかった。だからのうっかりと、だ。
そのうっかりの部分で知ってしまうことは。
「人形になった方が良い。いつまでも、思い出に殺されるのはきついだろうし。誰にも知られたくない秘密を持つならば、口は動かない方がぐっと楽だ」
彼女に近づく、近づいた。
ヒールの靴がかつかつとなる。
白タイルから、バラの園に足を入れれば、土を踏む感触。
「そなたは余が“大切”にしてやろう。このバラと同じく、美しいままにさせてやるから安心するが良い。
愛してやろうぞ、ユーリ。そなたは、余に愛されるだけの価値はある。シブリールが愛した女だ、余とて人並みの思いが――」
足から、力が、抜けた。
突如の異変は、瞬間的に連続する。
下半身全ての力が抜けた。上半身、右側に至っては力が入るというのに――ごっそりと体が抜け落ちたような気分。