春夜姫
「魔の森を通らずに森の向こう側へ行く道を、教えていただけませんか」
夏空は、真っ青な瞳を狩人に向けました。
狩人は、申し訳なさそうに眉を下げ、首を振りました。
「出来ません。いえ、実はその道を知らないのです」
その表情を見ていたクロが、ワン、と吠えました。狩人は眉を上げ、目を見張りました。
「でも、お前」
クロは立ち上がり、夏空の側で止まりました。
「クロさん」
すっと立つクロのツヤツヤとした背を夏空は撫でました。
「クロが案内すると言っています。あの商人達の匂いを辿ると」
「まあ」
「そんな……」
夏空は嬉しい気持ちよりも、不安が先に広がります。狩人や奥さん、可愛らしい坊やから引き離していいのか。人間よりもずっと短い命であるはずの犬なのに、魔法の力を浴びたせいで長く生きているクロを、この場所から遠く離れた所へ連れていいのか。
狩人はクロを呼び、クロはそれに応じました。納屋の奥へ入り、何か言葉を交わしました。狩人とクロが夏空と春夜姫のところへ戻り、クロはまた夏空の脇に立ちました。
「連れて行ってください。また姫様の役に立てると思えば、こいつも本望だと」
夏空は、真っ青な瞳を狩人に向けました。
狩人は、申し訳なさそうに眉を下げ、首を振りました。
「出来ません。いえ、実はその道を知らないのです」
その表情を見ていたクロが、ワン、と吠えました。狩人は眉を上げ、目を見張りました。
「でも、お前」
クロは立ち上がり、夏空の側で止まりました。
「クロさん」
すっと立つクロのツヤツヤとした背を夏空は撫でました。
「クロが案内すると言っています。あの商人達の匂いを辿ると」
「まあ」
「そんな……」
夏空は嬉しい気持ちよりも、不安が先に広がります。狩人や奥さん、可愛らしい坊やから引き離していいのか。人間よりもずっと短い命であるはずの犬なのに、魔法の力を浴びたせいで長く生きているクロを、この場所から遠く離れた所へ連れていいのか。
狩人はクロを呼び、クロはそれに応じました。納屋の奥へ入り、何か言葉を交わしました。狩人とクロが夏空と春夜姫のところへ戻り、クロはまた夏空の脇に立ちました。
「連れて行ってください。また姫様の役に立てると思えば、こいつも本望だと」