春夜姫
「そうじゃ。一見、人間のためになるようなことじゃ。魔女の作る薬や助言は大いに効き目はあるし、悪魔もきちんと仕事をこなす。しかし、その代償に何を要求されるか解らん」

「お金ですか」
「金ならまだましじゃ。体の一部や無理難題、ただの人間には予想もつかぬような物に、途方もない価値がある」
 夏空は体がにわかに震えているのを覚え、くっと下腹に力を入れました。

「怖いかね」
 おじいさんが尋ねました。夏空はしっかりと首を横に振りました。

「悪魔や魔女に会ったら、どうしたら良いのでしょう」
 今度は夏空がおじいさんに尋ねます。おじいさんはにかっと笑いました。

「何、気を強く持つことじゃよ。いきなり取って食われるわけではなし、お前さんの得意な歌でも歌ってやることだ」
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