春夜姫
 夏空は、ずんずんと森を進んで行きました。森が明るかったのは最初のうちばかりで、次第にそこは肌寒く、昼間だというのに薄暗い、不気味な場所へと変わっていました。ある鳥は悲しげにさえずり、またある鳥は夏空をあざ笑うかのようにけたたましく鳴きました。

 夏空は色々な歌を歌いました。特にふるさとの歌を好んで歌いました。ゆったりと、勇ましく、静かに、大きな声で。すると心が落ち着き、足元もしっかりしました。行く先に光を見ることが出来ました。

< 48 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop