春夜姫
 戸が開き、中からおばあさんが現れました。腰が曲がり、鋭くとがった鼻は鷲を思わせます。
「南の王の末息子、夏空の王子か」

 夏空ははっと息を飲みました。家の中は、外から見るよりもずっと広く、薄暗く、そして何人もの目がこちらを見ています。
 おばあさんは夏空の様子を見てにやりと笑いました。夏空が逃げようとした時には遅く、いつの間にかはたくさんの魔女に囲まれていました。夏空は魔女の集会の場に居合わせてしまったのです。


 夏空は椅子に縛られて、身動きが取れなくなりました。魔女たちはひそひそと、楽しそうに話しています。時おり夏空のことを見ては、いやな笑みを浮かべました。
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