春夜姫
「可哀想なことをする」
 にやにやと笑いながらある魔女が言いました。初めに戸を開けた魔女です。

「ああいう歌は嫌いなんだよ」
「みんな苦手だけど、特にあんたは音痴だからねえ。このあいだの集会でも」
「ちょっと、止めておくれよ」

 話し声が大きくなり、内容が夏空の耳に届くようになりました。
「そう言えば、近ごろ悪魔が騒ぐね。あれが出来上がるんだろう?」
「アレ?」
「赤の魔女が瓶に詰めた、春夜姫の声さ」

 ああ、と一同が揃って声を上げました。
「もう七年経つかね」
「この冬を越えたら七年さ」
「悪魔でなくても手に入れたいね」
「アレがあったら、さぞや」
「若い女の皮を纏って、男をたぶらかしてやろう」
「婆ァが、笑わせてくれるね」
「あんたには言われたくないね」

 魔女たちは、とりとめのない話を続けています。
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