春夜姫
 魔女たちは夏空を取り囲み、一人が杖を振ると夏空の口が開きました。

「歌うでないよ。お前の歌は明るくて私たちには毒だ。それでは話ができない」
 魔女たちが歌に怯むのは解っていたので、夏空は口がきけるようになったらとびきり明るい歌を歌ってやろうと思っていました。が、それは先制されてしまいました。

「話?」
 夏空は聞き返しました。
 魔女が一人、前に出て、
「お前が望むものを一つ、与えよう。そのかわりお前も一つ、与えなければならない」
 と言いました。

 夏空の耳に、その言葉はとても魅力的に響きました。
 夏空は懸命に考えました。空腹を覚えて久しいから、テーブルいっぱいの料理? 傷が痛むので、その治療? はたまた、旅の目的である「国のためになるもの」?

 違う。
 首を上げ、夏空は言いました。
「私を解放してくれ」
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