春夜姫
 夏空は自由の身になることを望みました。この魔女たちの住み家から解放されなければ、目的を達成することも、家に帰ることも出来ません。

「良いだろう」
 前に出ている魔女が、他の魔女と頷きあって答えました。
 夏空はほっとするのも束の間、魔女に何を要求されるのかと身構えました。一つ……何を与えなければならないのだろう。「ただの人間には予想もつかぬような物に、途方もない価値がある」と、白いひげのおじいさんが言っていたことを思い出します。

「ではこちらは」
 ぴたり、夏空と魔女の目が合いました。夏空は息を詰めます。魔女たちは、申し合わせたようににやりと笑いました。

「お前の」

 空気が止まりました。

「歌声」「右腕」「左腕」「右足」「左足」「首」
< 56 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop