春夜姫
 魔女たちが一斉に口を開きました。
「ま、待ってくれ」
 夏空の制止も意味はなく、魔女たちは杖を振りました。

 夏空の縄が解かれ、夏空は自由になりました。
「どうだ」
 魔女たちは、夏空を見上げました。

「これでは、約束が違う」
 夏空は大きな声で叫びました。
「何が違う。お前も私たちも、一つずつを得た。公平な結果ではないか」
「違う。約束では、一つずつ与えるはずだった」
「つまり、一つずつ得られるということだ」
「詭弁だ。私を騙したな」

 魔女たちは声を立てて笑います。
「さあ皆、今日はこれでお開きにしよう」
 そうしよう、そうしようと同意の声が上がり、魔女たちはそれぞれの収穫を手にしました。

「待て!」
 魔女たちはそれぞれのローブを翻して、砂塵のように消えてしまいました。

 傾いた家の中には、青い鳥の姿に変えられた夏空が、先ほどまで自分が縛られていた椅子の背もたれにとまってうなだれていました。
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