春夜姫
ああ!
私たちの無垢なお姫様は、この後その身に降りかかる恐ろしい出来事を知る術を持たないのです。
王様とお后様は、魔女との約束――子どもが最初に魔女に与えたものを、魔女が子どもからもらう約束、その意味が汲めずに不安だったのです。
「魔女にはこれを渡しなさい」
と、お二人は、美しく珍しい宝石をいくつか春夜姫に持たせました。そして不安そうな面持ちのまま、魔女のもとへと春夜姫を送り出しました。
森を良く知る狩人に率いられ、春夜姫は森の奥へ奥へと進みます。ピクニックでは来たことのないようなところです。森は明るくて、小鳥の美しくさえずる場所だとばかり思っていた春夜姫の心は、鬱蒼とした森の中の細い道を進むごとに元気を無くしていきました。