春夜姫
「お前もずいぶんかしこいんだね。ほら、食べなよ」
家畜小屋の隅で、男の子は乾燥した餌を器にすくって夏空の前に置きました。夏空は食前の挨拶をするように再び頭を下げて、餌をついばみました。
男の子は再び餌の袋を開けて、大きな器にすくい上げました。小屋の中にいる牛や馬、鶏にも餌をやりました。
そのうちに、クロが歩み寄ってきて夏空の前に座りました。夏空は体より大きい器の中で、埋もれるように静かに餌を食べていましたが、クロの気配を感じると器を出てクロを見上げました。
「君は」
クロが話し出し、夏空は慌てて男の子の方を見ました。
「気にしなくて良い。儂らの会話は儂らにしか聞こえぬよ」
クロは改めて夏空を見ました。
「君は人間だな。この辺りの生まれではなく、それに高貴な方なのではないかね」
言い当てられて、夏空は目を丸くしました。
「どうして」
「儂は犬だからな。鼻が利くのだ」
家畜小屋の隅で、男の子は乾燥した餌を器にすくって夏空の前に置きました。夏空は食前の挨拶をするように再び頭を下げて、餌をついばみました。
男の子は再び餌の袋を開けて、大きな器にすくい上げました。小屋の中にいる牛や馬、鶏にも餌をやりました。
そのうちに、クロが歩み寄ってきて夏空の前に座りました。夏空は体より大きい器の中で、埋もれるように静かに餌を食べていましたが、クロの気配を感じると器を出てクロを見上げました。
「君は」
クロが話し出し、夏空は慌てて男の子の方を見ました。
「気にしなくて良い。儂らの会話は儂らにしか聞こえぬよ」
クロは改めて夏空を見ました。
「君は人間だな。この辺りの生まれではなく、それに高貴な方なのではないかね」
言い当てられて、夏空は目を丸くしました。
「どうして」
「儂は犬だからな。鼻が利くのだ」