春夜姫
 十歳になったら一人で魔女に会いに行く、と約束していたようだ。何が起こるか検討がつかず、姫様もご主人も震えていた。

 魔女の家が見えたら、その先は一人きりで歩かなければならない。家の周りには、用のある人間しか入れないよう、魔法がかかっているのだ。
 ご家来衆はとっくの昔に怯えて森を出てしまった。ご主人もその先へ行けないことを伝えると、姫様は笑顔を残して魔女の家を目指した。そして、家に入った。

 ご主人は儂に、様子をうかがって来るよう命じた。儂は犬だから、その「なわばり」に入ることが出来た。
 が、家の中を覗くことはできなかった。そうこうするうちに、突然竜巻のような風が起こった。

 儂は自分の身を守るために家から離れた。すぐに風は止んだが、魔女の家は跡形もなくなっていた。
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