春夜姫
夏空は、未だ見ぬ春夜姫のことを思いました。期日への焦燥、結果の出ない苛立ち。連日連夜、自分のために知恵を絞り手を尽くす人びとに、何のねぎらいの言葉も掛けてやれない虚しさ。
「姫君には、おいたわしい限りです……口が利けないことよりも、胸の痛みに苦しんでお過ごしのことでしょう」
ご主人は鼻をすすりました。
「まったくだよ……最後に喋ったのが、魔女の家が見えて俺と別れた時。あの時、姫様は、恐ろしくってたまらなかったに違いないのに、俺に笑顔で言ったんだ」
ありがとう、狩人さん。気をつけてお帰りになって。
春夜姫の言葉を思い出してか、ご主人の声は震えました。
「俺が最後なんて……あんなことになるなら、王様やお后様に言いたいことが山ほどあったろうになあ」
クロは床に伏せてじっとしていました。夜が更けていきます。
「姫君には、おいたわしい限りです……口が利けないことよりも、胸の痛みに苦しんでお過ごしのことでしょう」
ご主人は鼻をすすりました。
「まったくだよ……最後に喋ったのが、魔女の家が見えて俺と別れた時。あの時、姫様は、恐ろしくってたまらなかったに違いないのに、俺に笑顔で言ったんだ」
ありがとう、狩人さん。気をつけてお帰りになって。
春夜姫の言葉を思い出してか、ご主人の声は震えました。
「俺が最後なんて……あんなことになるなら、王様やお后様に言いたいことが山ほどあったろうになあ」
クロは床に伏せてじっとしていました。夜が更けていきます。