『Badend Story〜2人のジャンヌ・ダルク〜』(歴史ダークファンタジー)
それを悟ったのか、そのリーシャの質問には、アーサーではなく、ローが答えた。



『な〜に言ってるんだよ〜リーシャお前や、ここに居る子供以上に大切な事なんて、有るわけないじゃないか』


『でも…それなら何でリーシャ達を置いて行くの?…もう嫌だよ…パパやママに置いて行かれるの…』


(置いて行かれる?…)


(そっかぁ…“そういう事”だったのか…)




俺は今のリーシャの言葉で全てが飲み込めた。



『リーシャ達を置いて行かないで』


『………』



リーシャの言葉が賑やかな食卓を静まり返らせ、その沈黙をブチ破るかの様にローは大声で笑った。



『フハハハハ…大丈夫だよ〜リーシャ俺やアーサーはお前達を置き去りに何かしやしないよ〜』


『お父さん達は、そりゃあ家を留守にする時だって有るけど、絶対に戻って来るから』


『それにな…お父さん達が出掛ける用事ってのは、お前達の為でも有るんだ』

『お前達だけじゃ無い…お父さん達は、この国中の人、全員の為に、お出掛けしてるんだ』


『リーシャやカーム、ロイにレイ…』


『ウィリアムにテッド、エリーにブルータス。』


『イーシュにキール…バルス。』


『ジルにコーネリアにマリン。』


『この国からお前達の様な子供達を増やさない為にも、お父さん達が頑張ってる』


『だから。もう少しだけ、辛抱してくれないか?』


『大丈夫だ何が有っても、絶対にお父さん達はここに帰って来るから約束する。』



ローはここに居る子供達全員の名前を呼び、皆に約束した。“何が有ってもここに帰って来る”と。



『だから、明日の朝、アーサーがこの村を出る時は、皆笑顔で見送って上げような』


『うん』



そのローの言葉に、子供達全員が返事をした。


それから皆で食事を続け、楽しい歓迎会とちょっぴり切ないお見送り会は幕を閉じた。
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