レイコーン
 
マールは父親と二人で暮らしている。
 
母と弟がいるにはいるのだが
数年前に行方がわからなくなってしまった。
 
父親は仕事に忙しく週末に迎えに来たことなど一度もない。
 
そのため彼は、いつも時間の許す限り学校の図書館で時間を使い
スクールバスで家に帰っていた。
 
 
マールは帰り支度をすませ、教室を出ようと準備した。
 
今日は図書館で時間をつぶさなくてもバスに間に合う。
時計を見ながらマールはこれからの予定を考えていた。
 
かばんを持ち歩き、教室のドアに近づいてもさよならとすら声かける人もいなく、
何の邪魔もなく、スムーズに教室を出る。
 
 
廊下を歩いていると
ただ、バスステーションへと向かう
マールの足音だけが妙に大きく響き渡る。
 
途中通る教室の中から聞こえてくる笑い声は
マールを受け付けない。

教室のざわめきは
マールの足音をさらに際立たしていた。

 

学校の玄関から
数分歩いたところにバスステーションがある。

 

ステーションは
それぞれの帰りの方向にあわせていくつか設けてあり
今日は、ポツリポツリと
指折る程度の人数がしか立っていない。

 

バスがやってくるのは終礼10分後。
誰もいないバスステーションは席争いをする必要もなく
彼はただ淡々とバスが来るのを待ち続けていた。

 

バスを待つ他の仲間達は
マールとは帰りの方向が違い、
別のバスステーションにいる。
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